不動産売却の落とし穴「鍵の管理」に潜む囲い込みの実態
お部屋を預けているのに、内見が入らない。その原因が物件ではなく、内見用の鍵をどこに置いているかにあることがあります。鍵の置き場所は、他社が買主様を連れてきやすいかどうかをそのまま左右します。この記事は囲い込みのなかでも「鍵の管理」という一点に絞って、何が起きるのかと、売主様がご自身で確認できることをお伝えします。
内見用の鍵とは
内見用の鍵とは、購入を検討される方にお部屋を見ていただくために使う鍵です。売主様がすでに住まれていない物件では、お客様を案内する他社の担当者がこの鍵を受け取ってお部屋を開けます。その鍵を現地のキーボックスに置くか、仲介会社の事務所に置くかで、他社が案内に動けるかどうかが変わります。
「早く売れない」には理由がある
売却を任せているのに問い合わせが来ない。届くのは値下げの提案ばかりで、他社からの紹介もない——。こうしたお悩みを抱える売主様は少なくありません。
物件に問題があるように見えて、実は会社側の都合による「囲い込み」が原因になっているケースがあります。その背景にあるのは両手取引という仕組みです。
両手取引とは、1社が売主様と買主様の双方を担当し、双方から仲介手数料を受け取る取引です。制度上認められた正当な取引で、当社も両手取引を行うことがあります。ただ、1件あたりの手数料収入が2倍になるため、「自社で買主様を見つけたい」という力が構造として働きます。囲い込みがなぜ起きるのかという全体の話は、手数料の仕組みから別の記事で整理しています。
「鍵を遠方の事務所に置く」という手口
囲い込みのなかでも売主様がとくに気づきにくいのが、この鍵の管理を使った手口です。
本来であれば、他社の担当者がお部屋に興味を持った時点で、現地のキーボックスか近隣の不動産会社で鍵を受け取り、すぐに案内できます。買主様へ紹介しやすい状態です。
問題のあるケースでは…
他社から内見の希望が入っても「鍵は弊社の事務所までお越しください」と案内されます。事務所が遠方にあれば、相手には移動の手間と時間と費用が生じます。紹介を後回しにしたり、別の物件を優先したりするようになります。結果として、お部屋は内見の機会そのものを失っていきます。
この手口のやりにくいところは、レインズ(不動産業者間で物件情報を共有するネットワーク)に登録済みで、形のうえでは「公開」されていても、実態としては非公開に近い状態になってしまう点です。
内見が1件減るのは、1人の買主様が来なかったという話にとどまりません。複数の買主様が同じ時期にお部屋を見て、はじめて価格の競争が生まれます。鍵の置き場所は、その競争が起きるかどうかを決めてしまいます。「安く」「遅く」売れる結果につながるのは、ここが理由です。
鍵について、売主様が確認できること
会社を疑うためではなく、売却活動が機能しているかを確かめるために使ってください。
鍵はどこに置いていますか
現地のキーボックスか、事務所での保管かで内見のしやすさが大きく変わります。事務所保管であれば、他社の担当者がどのくらいの距離を移動することになるのかまで聞いてかまいません。
他社から内見の希望が来たとき、どう案内していますか
鍵の渡し方そのものより、答え方に出ます。他社の案内を歓迎しているのか、手間として扱っているのかが分かります。
レインズの登録状況の確認、媒介契約の種類、活動報告の求め方については、囲い込みの全体をまとめた記事と、会社選びの記事でご説明しています。契約のあとに自分の目で確かめられる書類の話は、こちらにあります。
エルシーズの取り組み
当社では、こうした囲い込みが構造的に起こらない仕組みを整えています。
現地での鍵管理を徹底
戸建ては現地キーボックスの設置または近隣業者への鍵預託により、他社もすぐに内見できる体制にしています。
自社内覧予約システム
QRコードから仲介会社が内覧日を予約でき、予約と同時に当社とオーナー様へ即時に自動通知されます。内覧拒否や内覧隠しができない構造です。
毎週月曜のレポーティング
契約形態にかかわらず、問い合わせ数・内見数・反響状況を毎週ご報告します。
鍵の置き場所は、担当者の丁寧さに任せる話ではありません。仕組みで決めておけば、売主様が後から確認する必要もなくなります。
よくあるご質問
- Q. 内見が入らないのは、価格が高いからでしょうか?
- 価格が原因のこともありますが、内見用の鍵がどこにあるかで内見の入りやすさは大きく変わります。鍵が遠方の事務所にあれば、他社の担当者は移動の手間と時間を負うことになり、紹介が後回しになります。価格を見直す前に、鍵の置き場所を確認してみてください。
- Q. 「鍵はどのように管理されていますか」と聞いても失礼になりませんか?
- 失礼にはなりません。売主様が確認してよい事柄です。会社を疑うためではなく、売却活動が機能しているかを確かめるための質問として聞いてください。事務所での保管であれば、他社の担当者がどのくらいの距離を移動することになるのかまで伺ってかまいません。
- Q. レインズに登録されていれば、囲い込みは起きませんか?
- 登録されていても起こります。鍵の管理を使った手口のやりにくいところは、形のうえでは「公開」されているのに、実態としては非公開に近い状態になってしまう点です。登録の有無だけでは判断できません。
- Q. マンションの場合も、鍵の管理は問題になりますか?
- なります。当社が現地キーボックスの設置や近隣業者への鍵預託を徹底しているのは戸建てですが、他社がすぐ内見できる状態にしておくという考え方は物件の種別を問いません。内覧予約システムで予約と通知を自動化しているのも、同じ理由です。
※本記事は2026年4月に公開し、2026年10月に内容を見直しました。
この記事を書いた人

渡邉 圭太
エルシーズ株式会社 代表取締役
1984年生まれ。芝浦工業大学卒業後、リゾートトラスト株式会社にて会員権営業に従事し、入社2年目に年間優秀社員賞を受賞。その後、不動産業界で売買仲介・賃貸仲介・賃貸管理の実務を幅広く経験し、2019年にエルシーズ株式会社を設立。「正直に、真っ当に」を掲げ、売却活動の透明化に取り組んでいる。
公益社団法人 全日本不動産協会 東京都本部 渋谷支部 役員/公益社団法人 不動産保証協会 東京都本部 渋谷支部 監事
エルシーズ株式会社(国土交通大臣(1)10190号)
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