不動産の囲い込みとは何か。なぜ起きるのかを構造から
「囲い込み」という言葉を聞いたことはあっても、なぜ起きるのか、自分の物件がそうなっているかをどう確かめるのかは、分かりにくいままになりがちです。この記事では、囲い込みが起きる仕組みを手数料の構造から説明し、売主様ご自身で確認できる4つのポイントをお伝えします。
囲い込みとは
囲い込みとは、売主様から媒介契約を受けた不動産会社が、自社で買主を見つけることを優先して、他社からの紹介や問い合わせを意図的に制限し、物件情報が広く行き渡らない状態をつくる行為です。
なぜ起きるのか。手数料の仕組みから説明します
囲い込みを理解するには、まず「両手取引」を知る必要があります。
両手取引とは、1社が売主様と買主様の双方を担当し、双方から仲介手数料を受け取る取引です。売主側と買主側を別の会社が担当する「片手取引」に対して、1件あたりの手数料収入が2倍になります。
ここが大事な点ですが、両手取引そのものは制度上認められた正当な取引です。当社も両手取引を行うことがあります。買主様を自社で見つけられたなら、それは自然な結果です。
問題は、両手取引を確保するために情報を絞ろうとする姿勢です。手数料が2倍になる仕組みがある以上、「自社で買主を見つけたい」という力は構造として働きます。特定の会社の人格の問題ではなく、仕組みに内在する力だという理解が出発点です。
売主様から見えにくい、4つの形
囲い込みは「他社に売らせない」と宣言して行われるものではありません。次のような、売主様の側から気づきにくい形で現れます。
| 01 | レインズに資料や写真がない 仲介会社が紹介したくても、そのたびに資料を取り寄せなければなりません。紹介の頻度が下がり、買主候補に届きません。 |
| 02 | 内見の機会が実質的に制限されている 内見用の鍵が遠方にあると、内見の日程が組みにくくなります。気軽に見られない物件は、内見数そのものが減ります。 |
| 03 | 他社へ情報を出さない・問い合わせを断る 他社から問い合わせがあっても「担当者が不在」「こちらから直接案内します」などと伝えて、紹介につながらないことがあります。 |
| 04 | 購入申込を受けたあと、自社の買主を優先する 売主側の会社が、自社で抱えている買主様を優先して取りまとめ、他社経由のルートを実質的に外す形です。 |
1つ目と2つ目は、不動産売却の囲い込みでより詳しくご説明しています。
このうち2つ目の鍵の話は、売主様からとくに見えにくい部分です。何が起きているのかを別の記事で詳しくご説明しています。
売主様に起きること
囲い込みが起きると、売主様の側に3つの影響が出ます。
| 01 | 売却活動が長引く 物件情報が他社に行き渡らないため、買主候補の幅が狭まります。「長く売れていない物件」という印象がつくと、さらに動きが鈍くなります。 |
| 02 | 価格交渉で不利になる 買主候補が少なければ競争が起きません。結果として「売れないので価格を下げましょう」という提案を受けやすくなります。 |
| 03 | より良い条件を逃す 本来なら、もっと高く買う方や、条件の合う方がいたかもしれません。それが分からないまま終わるのが、いちばん大きな損失です。 |
3つ目が厄介なのは、損をしたこと自体に気づけない点です。売れた価格が妥当だったのかを、後から確かめる手立てがありません。
売主様ご自身で確認できる4つのこと
会社を疑うためではなく、売却活動が機能しているかを確かめるために使ってください。
| 01 | 複数社から査定を取る 比べることで、各社の説明の仕方や根拠の示し方の違いが見えます。 |
| 02 | 媒介契約の種類とレインズ登録を確認する 専任媒介・専属専任媒介であれば、レインズへの登録義務が生じます。登録されているかどうかは、確認してよい事柄です。 |
| 03 | 問い合わせの状況を聞く 契約から1ヶ月以上たって問い合わせが一度もない、他社からの問い合わせを断っている形跡がある。こうした状況は確認したいところです。 |
| 04 | レインズの「取引状況」を見る 2025年1月の改正で、レインズの取引状況が登録事項になりました。公開中・交渉中といった状態が登録されるようになっています。 |
4つ目について補足します。この改正で新設されたのは登録事項であって、囲い込みを直接禁じる条文が置かれたわけではありません。行政処分の入口は「登録内容が事実と異なること」になります。つまり「囲い込みは違法です」という説明は正確ではありません。制度は、情報を登録させることで実態を見えるようにする方向で整えられています。
ひとりで判断しなくて構いません
ここまで読んで「自分の物件はどうなのだろう」と思われたら、セカンドオピニオンとして当社をお使いいただけます。今ご依頼中の会社に連絡が行くことはありません。
当社が「ライブ売却」で内見申込や他社からの広告掲載依頼をそのつどお知らせしているのは、こうした確認を売主様が後から行わなくて済むようにするためです。担当者が丁寧かどうかに頼らず、仕組みで見えるようにしておく。それが考え方の軸です。
よくあるご質問
- Q. 囲い込みは違法ではないのですか?
- 「囲い込みは違法です」という説明は正確ではありません。2025年1月の改正で新設されたのはレインズの取引状況という登録事項であって、囲い込みを直接禁じる条文が置かれたわけではありません。行政処分の入口は「登録内容が事実と異なること」になります。制度は、情報を登録させることで実態を見えるようにする方向で整えられています。
- Q. 両手取引は避けたほうがよいのですか?
- 両手取引そのものは制度上認められた正当な取引で、当社も行うことがあります。買主様を自社で見つけられたなら、それは自然な結果です。問題は、両手取引を確保するために情報を絞ろうとする姿勢のほうです。
- Q. 専任媒介にすると囲い込まれやすいのですか?
- 媒介契約の種類が囲い込みを決めるわけではありません。専任媒介契約・専属専任媒介契約であれば、レインズへの登録義務が生じます。登録されているかどうかは売主様が確認してよい事柄ですので、種類で選ぶより、登録と活動の状況を確かめられる状態にしておくことをおすすめします。
- Q. 自分の物件が囲い込まれているか、どうすれば分かりますか?
- 契約から1か月以上たって問い合わせが一度もない、他社からの問い合わせを断っている形跡がある。こうした状況は確認したいところです。あわせて媒介契約の種類とレインズ登録、レインズの取引状況をご確認ください。ご自身で聞きにくい場合は、セカンドオピニオンとして当社でお調べすることもできます。今ご依頼中の会社に連絡が行くことはありません。
※本記事は2026年10月時点の制度・運用にもとづいています。個別の事案についてのご判断は、必要に応じて専門家にご相談ください。
この記事を書いた人

渡邉 圭太
エルシーズ株式会社 代表取締役
1984年生まれ。芝浦工業大学卒業後、リゾートトラスト株式会社にて会員権営業に従事し、入社2年目に年間優秀社員賞を受賞。その後、不動産業界で売買仲介・賃貸仲介・賃貸管理の実務を幅広く経験し、2019年にエルシーズ株式会社を設立。「正直に、真っ当に」を掲げ、売却活動の透明化に取り組んでいる。
公益社団法人 全日本不動産協会 東京都本部 渋谷支部 役員/公益社団法人 不動産保証協会 東京都本部 渋谷支部 監事
エルシーズ株式会社(国土交通大臣(1)10190号)
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