海外転勤が決まったら。出国前に済ませる手続き
海外転勤で留守にされるお部屋を貸し出す場合、募集の手配とは別に、出国前に済ませておく手続きがあります。税務署への納税管理人の届出と、市区町村への国外転出届です。この2つは順番が大事で、先に転出届を出してしまうと印鑑証明書が取れなくなります。お車の処分などを予定されている方は、とくにご注意ください。
納税管理人とは
納税管理人とは、日本を離れているあいだ、確定申告書の提出や税金の納付、税務署からの書類の受け取りといった手続きを代わりに行う人です。ご親族でも、税理士等の専門家でもかまいません。国税通則法117条にもとづく制度です。
出国前にすること、出国後にできなくなること
順番は、こうなります。
1 納税管理人を決めて、税務署へ届け出る
(納税管理人を定めたとき、または出国の日まで)
2 印鑑証明書が必要な手続きを先に済ませる
(お車の名義変更や処分など)
3 市区町村へ国外転出届を出す
国外転出届が受理されると住民基本台帳から除かれ、非居住者になります。この時点から住民票と印鑑証明書は取れなくなります。
海外転勤に合わせてお車を処分される方は少なくありません。名義の手続きには印鑑証明書が要ります。転出届より前に済ませてください。正直に申し上げると、ここで慌てられる方をいちばん多く見ています。
なお国外転出届をいつから受け付けるかは、市区町村によって運用が異なります。出発日が決まった段階で、お住まいの窓口にご確認ください。
貸したお部屋の家賃は、どう課税されるのか
非居住者が国内の不動産を貸して受け取る賃料は、国内源泉所得として総合課税の対象になります。原則として確定申告が必要です(国税庁タックスアンサーNo.1926)。
納税管理人を定めていれば、翌年の2月16日から3月15日までに、納税管理人を通じて申告します。定めずに出国された場合は、あとから納税管理人を決めたうえで同じ期間に申告することになります。
所得税のほかに、年の途中で海外転勤になった場合の住民税、それに固定資産税と都市計画税の納付も、納税管理人に代行してもらう形になります。出国後に日本の口座から払えるようにしておくか、どなたに託すかを決めておく必要があるということです。
入居者様が個人か法人かで、源泉徴収の扱いが変わります
源泉徴収とは
源泉徴収とは、お金を支払う側があらかじめ税額を差し引いて、本人の代わりに国へ納める仕組みです。給与から所得税が引かれているのと同じ考え方です。
非居住者が受け取る賃料は、原則として支払う側が20.42パーセントを源泉徴収します。ただし、ここに例外があります。
土地、家屋等を自己またはその親族の居住の用に供するために借り受けた個人が支払うものは、源泉徴収されません。
── 国税庁タックスアンサーNo.1926
つまり、個人の入居者様がご自分やご家族のお住まいとして借りられる場合、源泉徴収はありません。分譲マンションを個人の方にお貸しするほとんどのケースはこちらに当たります。
一方で法人名義(社宅)の場合は、支払う企業の側に源泉徴収の手続きが生じます。これが、社宅規定で「海外にお住まいのオーナー様の物件は契約できない」と定めている企業が少なくない理由です。法人名義での募集を考えておられる場合は、このことを頭に置いておいてください。
国民年金は「加入が必要」ではなく、任意加入です
ここは誤解されやすいところです。海外に居住することになると、国民年金の強制加入被保険者ではなくなります。そのうえで、日本国籍の方であれば任意加入することができます(日本年金機構)。入らなければならない、という制度ではありません。
任意加入して保険料を納めると、納付期間に応じた老齢基礎年金のほか、海外在住中に亡くなられたときの遺族基礎年金、病気やけがで障害が残ったときの障害基礎年金が支給の対象になります。入らない選択もありますが、この保障がなくなるということです。
これから転出される場合の手続きは、お住まいの市区町村の窓口です。お勤め先で厚生年金が続くかどうかによって扱いが変わりますので、勤務先と年金事務所にご確認ください。
貸すか、空けておくか
貸したほうがよい、とは申しません。ただ、空室のまま持たれる場合も管理の手は要りますし、固定資産税は同じようにかかります。そのうえで、どちらが合っているかという話です。
転勤の期間中だけ貸したいのであれば、期間を決めて終われる定期借家契約という選び方があります。帰任のタイミングで戻れるようにしておきたい方には、こちらをおすすめしています。
出国後は、時差もあって連絡が取りにくくなります。当社が契約形態にかかわらず募集状況を毎週ご報告しているのは、海外にいらっしゃるオーナー様にとっては特に意味があると考えているからです。貸し出しまでの全体の流れは、別の記事にまとめています。
よくいただくご質問
- Q. 納税管理人は誰に頼めばよいですか?
- 日本国内に住所がある方であれば、ご親族でもかまいません。税理士等の専門家に依頼することもできます。確定申告や納税の実務を任せることになるので、連絡が取りやすく、手続きを続けてお願いできる方が適しています。
- Q. 出国前に納税管理人の届出が間に合わなかったらどうなりますか?
- あとから納税管理人を定めて届け出ることができます。ただし納税管理人の届出をせずに出国された場合、その年の確定申告は通常とは別の手続きになります。どちらに当たるかで対応が変わるので、税務署または税理士等の専門家にご確認ください。
- Q. 家賃から税金が引かれてしまうのですか?
- 入居者様が個人で、ご自身やご親族のお住まいとして借りられる場合は源泉徴収されません。法人名義のご契約では、支払う企業の側で20.42パーセントの源泉徴収が行われます。源泉徴収された分は、確定申告で還付を受けるための申告を行うこともできます。
- Q. 国民年金には入らないといけませんか?
- 海外に居住されると強制加入ではなくなります。任意加入は選べますが、義務ではありません。遺族基礎年金や障害基礎年金の対象になるかどうかが変わるため、加入されるかは日本年金機構または年金事務所にご相談のうえご判断ください。
※本記事は2026年10月時点の情報にもとづいています。税務の記載は国税庁タックスアンサーNo.1926および国税通則法117条、年金の記載は日本年金機構の公表内容によります。個別のご判断は税理士等の専門家に、年金については日本年金機構または年金事務所にご確認ください。国外転出届の受付時期や必要書類は市区町村によって異なります。
この記事を書いた人

渡邉 圭太
エルシーズ株式会社 代表取締役
1984年生まれ。芝浦工業大学卒業後、リゾートトラスト株式会社にて会員権営業に従事し、入社2年目に年間優秀社員賞を受賞。その後、不動産業界で売買仲介・賃貸仲介・賃貸管理の実務を幅広く経験し、2019年にエルシーズ株式会社を設立。「正直に、真っ当に」を掲げ、売却活動の透明化に取り組んでいる。
公益社団法人 全日本不動産協会 東京都本部 渋谷支部 役員/公益社団法人 不動産保証協会 東京都本部 渋谷支部 監事
エルシーズ株式会社(国土交通大臣(1)10190号)
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